自然農で使う自家製資材完全ガイド|「肥料」ではなく「土の生き物を応援する」という考え方

「自然農って無肥料なんですよね。でもストチュー水とか米ぬかとか、いろいろ使ってますよね? それって矛盾しないんですか?」
鋭い質問だと思います。たしかに私は「無肥料・無農薬」と言いながら、いくつもの自家製資材を畑で使っています。一見すると矛盾しているようですが、ここには自然農ならではの大事な考え方があります。
こんにちは。無肥料・無農薬・不耕起栽培で、自然に寄り添う家庭菜園を実践しているダイヤンです。この6年間、いろいろな自家製資材を試してきました。買えば数千円する資材も、台所にあるものや畑から出るもので、ほとんど自分で作れてしまいます。
この記事では、自然農で使う自家製資材を一通り紹介します。ただ作り方を並べるだけではありません。いちばん伝えたいのは、これらの資材に共通する「作物に効かせる肥料ではなく、土の生き物を応援するもの」という考え方です。ここが腑に落ちると、「無肥料なのに資材を使う」理由がすっきり見えてきます。それぞれの詳しい作り方は専用記事にゆずり、ここでは全体像と“使い分けの地図”をお届けします。
大前提|自家製資材は「肥料」ではなく「土の生き物への応援」
まず、いちばん大事な考え方からお話しします。これを押さえておくと、この先の話がすべてつながります。
一般的な家庭菜園で「肥料」というと、野菜に直接栄養を効かせるものを指します。窒素・リン酸・カリを与えて、葉を茂らせ、実を大きくする。野菜の口に直接ごはんを運んであげるイメージです。
自然農の自家製資材は、これとは働きかける相手が違います。狙うのは野菜ではなく、土の中の微生物や生き物たちです。米ぬかや微生物資材で土の生き物を元気にすると、その生き物たちが有機物を分解し、団粒構造をつくり、結果として野菜が育つ豊かな土になっていく。野菜に直接ごはんをあげるのではなく、土の中の働き手を応援して、土全体を育てる発想です。
ダイヤンの考え方
「無肥料」と「資材を使う」は、私の中では矛盾していません。野菜に直接効かせる肥料は使わない。でも、土の生き物を応援する資材は使う。この線引きさえはっきりしていれば、自然農の軸はぶれません。だから私は、自分が使う資材を必ず「これは野菜に効かせる肥料か? それとも土の生き物への応援か?」と問い直すようにしています。
この考え方は、自然農そのものの入り口でもあります。自然農の全体像から知りたい方は、こちらの記事もどうぞ。



自家製資材の早見表|「応援タイプ」と「肥料タイプ」
この記事で紹介する資材を、先ほどの考え方で整理したのが下の表です。自然農で中心になるのは、左の「土の生き物を応援するタイプ」。右の「作物に効かせる肥料タイプ」は、自然農では基本的に使いませんが、有機栽培との違いを知る意味で紹介します。
| 資材 | タイプ | おもな働き |
|---|---|---|
| 米ぬか | 応援(微生物の餌) | 土の微生物を増やし、分解を促す |
| 微生物活性剤 | 応援(微生物の供給) | 有用菌を補い、土と葉を元気にする |
| ストチュー水 | 応援(株の自衛強化) | 葉に散布し、病害虫を寄せにくくする |
| 木酢液 | 応援(微生物の餌・忌避) | 微生物を活性化し、害虫を遠ざける |
| もみ殻・くん炭 | 応援(物理改良・すみか) | 水はけ・通気を整え、微生物の住処になる |
| 落ち葉・雑草堆肥 | 応援(有機物の還元) | その土地の有機物を土に還す |
| 草木灰 | 肥料寄り(ミネラル補給) | カリ・石灰を補う・pH調整 |
| ぼかし肥料・油かす | 肥料(作物に効かせる) | 窒素などを直接効かせる(自然農では基本使わない) |
それでは、ひとつずつ見ていきましょう。
① 米ぬか|自然農の自家製資材の「主役」
自家製資材の中で、私がいちばん頼りにしているのが米ぬかです。わが家は、いつもお米を買っている米農家の知人から、もみ殻と一緒に無料で分けてもらっています。そういうお付き合いの中でのことなので、改めてお礼をすることもありません。こういう伝手がない場合は、精米所やコイン精米機の脇、JA、お米屋さんあたりを当たってみるのがいいのではないかと思います。私は買ったことがなく値段の感覚を持っていないので無責任なことは言えませんが、少なくともわが家では一円もかかっていない資材です。
米ぬかには糖・タンパク質・脂質がたっぷり含まれていて、しかも粉状なので、土の微生物にとってこの上ないごちそうです。草マルチや残渣の上から軽くふりかけると、微生物が一気に増えて分解が進みます。これがまさに「土の生き物を応援する」資材の代表格。野菜に直接効かせる肥料ではなく、あくまで微生物への“差し入れ”です。
ダイヤンの使い方
一株あたり一〜二握りを目安に、草マルチの上から薄くパラパラと。一度にドサッとではなく、月1回くらいの少量を繰り返すのがコツです。土に混ぜ込むとカビが出たり、分解のときに一時的に土の窒素が足りなくなる「窒素飢餓」が起きることがあるので、私は表面にまくだけにしています。
使うときの注意:まきすぎるとカビやナメクジ、ネキリムシを呼んでしまうことがあります。「少量を、表面に、こまめに」が鉄則です。米ぬかは冬の土づくりでも活躍するので、季節の使い方はこちらも参考にしてください。



② 微生物活性剤(えひめAI)|台所の材料で作る微生物のもと
ヨーグルト・ドライイースト・納豆・砂糖。この台所にあるものだけで、有用な微生物をたっぷり含んだ活性剤が作れます。もとは愛媛県の研究所が水質浄化のために開発した「えひめAI」という微生物資材で、家庭でも簡単に再現できるのが魅力です。
乳酸菌・酵母菌・納豆菌という3種類の微生物が、それぞれ役割分担をしながら働きます。土にまけば微生物のエサと供給源になり、葉に散布すれば葉の老廃物を分解して元気にしてくれる。さらにコンポストの発酵促進や、台所・トイレの掃除にまで使える優れものです。これも典型的な「土の生き物を応援する」資材ですね。
作り方の詳しい手順(分量・発酵温度・失敗の見分け方)は、専用の記事でステップごとに解説しています。



③ ストチュー水|酢と焼酎で作る、株を守るスプレー
「ストチュー水」は、酢・焼酎・木酢液を混ぜて薄めた自家製の葉面散布液です。名前は「酢+焼酎(しょうちゅう)」から。これを薄めて葉に散布すると、株が丈夫になり、病害虫が寄りつきにくくなります。
大事なのは、これは「殺虫剤」ではなく「忌避剤」だということ。虫を殺すのではなく、寄せつけにくくして、株自身の力を引き出すための資材です。だから土の生き物を皆殺しにすることもありません。野菜の自衛力を高める“応援”だと考えると、自然農の発想にぴったりはまります。
作り方・希釈の割合・散布のタイミングは、人気記事として詳しくまとめています。



④ 木酢液|微生物を元気にする液体(ただし安全性に注意)
木酢液は、木炭を作るときに出る煙を冷やして集めた液体です。約200種類もの成分を含み、薄めて土にまくと、有用な微生物のエサになって微生物を増やしてくれます。増えた微生物が病原菌を抑え、結果として作物が丈夫に育つ、という仕組みです。害虫を遠ざける効果もあるので、ストチュー水の材料にもなります。
木酢液でいちばん間違えやすいのが、濃度です。同じ液体でも用途によってまるで違います。わが家の使い分けは、残渣の分解・消臭に300倍/畝立てのときの土壌消毒に10〜50倍/葉面散布(ストチュー水の材料として)は300〜1000倍。濃さを取り違えると、効きすぎることも、まったく効かないこともあります。必ず用途とセットで覚えてください。慣れないうちは薄いほうから試すと安心です。
ただし、木酢液には注意点があります。製造時に高温になると、体に良くない成分(発がん性が指摘される物質)が混じることがあるのです。安全な木酢液を選ぶには、次の点が目安になります。
- 建築廃材などではなく、きちんとした原木から作られている
- 採取後に一定期間ねかせて、不純物(油分やタール分)を取り除いている
- 「木竹酢液認証制度」の認証品など、信頼できる製品である
ダイヤンの使い方
木酢液は、自家製資材の中で唯一「買ってくる」ものです。わが家は、実家の近くにある備長炭の窯元から、安く大量に分けてもらっています。備長炭は原木を焼いた炭なので、上に書いた「きちんとした原木から作られている」という条件を、そのまま満たしてくれる。これがストチュー水のコストをぐっと下げてもいます。近所に窯元がなくても大丈夫。原料と製法を明記している製品を選べば、同じ条件は満たせます。土と自分の体に入れるものですからね。
⑤ もみ殻・もみ殻くん炭|土の物理性を整え、微生物の住処になる
もみ殻は、お米のまわりの硬い殻です。これも米ぬかと同じく、知人の米農家からいただいている地域の資源です。もみ殻には、そのまま使う方法と、炭にして使う方法の2つがあります。
生のもみ殻|通路に敷いてふかふかに
生のもみ殻は分解がとてもゆっくりなので、畝と畝のあいだの通路に敷くのに最適です。踏んでも固まりにくく、水はけと通気を保ち、ぬかるみや雑草も抑えてくれます。畝の上は草マルチ、通路はもみ殻。この組み合わせで畑全体を「裸にしない」のが私のやり方です。詳しい使い方はこちらにまとめました。



もみ殻くん炭|蒸し焼きにして微生物のすみかに
もみ殻を低温で蒸し焼きにして炭化させたのが「もみ殻くん炭」です。専用のくん炭器を使えば、家庭でも作れます。炭になると無数の微細な穴があき、そこが菌根菌などの微生物の格好の住処になります。保水性と排水性を両立させ、酸性に傾いた土をやわらげる働きもあります。その土地のもみ殻を炭にして土に還す、まさに循環型の補助資材です。
ダイヤンの正直なところ
わが家では、もみ殻くん炭はまだ作っていません。作るのにそれなりの手間がかかるからです(もみ殻を分けてくれる知人も、くん炭にはしていません)。いま同じ役割を担っているのは、バーベキューで余った木炭。畝のまわりの溝に入れて、微生物の住処にしています。狙いはくん炭とまったく同じなので、いずれ溝の木炭をもみ殻くん炭に置き換えるのは大いにありだと思っています。溝の中=微生物のすみか(木炭・くん炭)/通路の表面=踏み固め防止(生のもみ殻)。この置き場所の違いさえ押さえておけば、混同しません。
作るときの注意:くん炭づくりは高温になり、消火が不十分だと再び燃え出す危険があります。風のない日に、広い屋外で、最後はたっぷりの水を使って火を消しきってください。窒素やリン酸はほとんど含まないので、これも肥料ではなく「土の環境を整える」資材です。
⑥ 落ち葉堆肥・雑草堆肥|その土地のものを、その土地に還す
庭に積もる落ち葉や、刈った雑草も立派な資材になります。落ち葉に米ぬかと土を重ねて積んでおけば、数か月で落ち葉堆肥(腐葉土)になります。雑草も同じように積んで発酵させれば雑草堆肥に。
これらは栄養を効かせる肥料というより、土の保水性や通気性を整える「土壌改良材」です。そして何より、「自分の庭から出たものを庭に還す」という、自然農の循環の思想そのものを体現しています。自然農では刈った草はその場に敷く(草マルチ)のが基本ですが、量が余ったときや落ち葉が大量に出たときは、堆肥にして還すのもいい方法です。
ダイヤンの使い方
わが家では、冬がこの作業の季節です。畑仕事が減るぶん、料理で出た野菜くずと刈った雑草、それに枯れ葉を、野菜を育てていない場所にまとめて撒いて、上から米ぬかをふっておく。春になるころには腐葉土になっています。堆肥枠を組んだりはしていません。畑に空いている場所さえあれば、置いておくだけで勝手にできます。



⑦ 草木灰・ぼかし肥料・油かす|自然農では「基本使わない」資材
最後に、自然農では基本的に使わないけれど、よく耳にする資材についても触れておきます。なぜ使わないのかを知っておくと、自然農の輪郭がよりはっきりします。
草木灰
草木を燃やした灰で、カリや石灰分を多く含みます。その場の草木から作れば循環型ともいえますが、成分としてはミネラルを「効かせる」性格が強く、肥料寄りの資材です。強いアルカリ性なので、まきすぎると土のバランスを崩します。使うとしても、ごく少量をスポット的に。なお、灰を作る野焼きは法律で原則禁止されているので、お住まいの自治体のルールを必ず確認してください。
ぼかし肥料・油かす
ぼかし肥料は、米ぬかや油かすを発酵させて作る有機肥料です。油かすは菜種や大豆の搾りかすで、窒素を多く含みます。どちらも有機栽培ではよく使われる優秀な資材ですが、これらは明確に「作物に栄養を効かせる肥料」です。外から栄養を持ち込んで野菜に直接効かせるという点で、無肥料を基本とする自然農とは考え方が異なります。
ダイヤンの考え方
ぼかし肥料や油かすが悪いわけではありません。有機栽培ではとても役立つ資材です。ただ、自然農で目指すのは「土が自分の力で肥えていくこと」。肥料を効かせてしまうと、土はその力を発揮しなくなります。だから私は、ここを使わない。同じ米ぬかでも、「微生物への差し入れ」として表面にまくのか、「肥料」として発酵させて効かせるのか。使い方の違いが、そのまま自然農と有機栽培の違いになっているんです。
自家製資材を使うときの3つの心得
最後に、どの資材を使うときも共通して大事にしている心得を3つ。これさえ守れば、資材で失敗することはほとんどありません。
- 少量から、こまめに……一度にたくさん使わない。米ぬかも活性剤も、少しずつ繰り返すほうが土は安定して育ちます。
- 「肥料」か「応援」かを意識する……その資材は野菜に効かせるものか、土の生き物を応援するものか。自然農で使うのは後者だと、いつも問い直します。
- 資材に頼りきらない……資材はあくまで土づくりの補助。主役は草マルチと、土の中の生き物です。資材がなくても回る畑を目指すのが理想です。
資材は便利ですが、それ自体が目的ではありません。土が育ってくれば、資材の出番はだんだん減っていきます。その全体像は、土づくりのガイドにまとめてあります。



さいごに|資材は「土の生き物への、ささやかな差し入れ」
自然農で使う自家製資材を一通り見てきました。米ぬか、微生物活性剤、ストチュー水、もみ殻、落ち葉堆肥。買ってくるのは木酢液くらいで、あとは台所や畑から生まれる、お金のかからないものばかりです。そして共通するのは、野菜に直接効かせる肥料ではなく、土の生き物たちへの“ささやかな差し入れ”だということ。
ダイヤンの提案
全部を一度に揃える必要はありません。まずは米ぬかから始めてみてください。草マルチの上に少しまくだけで、土の中の生き物が動き出します。慣れてきたら微生物活性剤、ストチュー水と、少しずつ仲間を増やしていけば十分です。買わずに作る。その土地のものを、その土地に還す。それが、となりのトトロのような畑への近道です。
各資材の詳しい作り方は、本文でリンクした個別の記事にまとめています。気になったものから、ぜひ試してみてください。使う量を間違えたり、まきすぎてカビが出たりしても、土は死にません。失敗しても大丈夫です。来年また種をまけばいい——それがずぼら菜園の気楽さです。
この記事が、みなさんの資材選びのヒントになれば嬉しいです。また次回も、自然農の視点から家庭菜園を楽しむヒントをお届けします。コメント・お気に入り登録もよろしくお願いします。
